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「全員きっちり並んで走る必要はないが、なるべく一人にはなるなよ。くれぐれも安全最優先でな。質問がなければ以上だ。じゃあ軽く行ってこーい」
パンと手のひらを打ち鳴らして行動開始を告げた関口顧問の前から、皆ばらばらと立ち上がる。
陸部ジャージについた芝を払いながら心なしか楽しそうにグラウンド外へ向かう部員たちを尻目に、げんなり重い空気を背負ったまま彩香がぐりんと隣を振り仰いだ。
「……なーんでもういるんスかあ? あと一時間はお勉強してるはずですよね? 特進クラスの先輩?」
「あっれー? 彩香ちゃん、何か今日も元気に怒ってるー?」
あと一時間は顔を見ずに済むはずだったのだ。
怒らずにいられるか。
しかも毎度毎度よく飽きずにそんな軽薄な笑みを貼り付けられるモンだな、と逆に感心する。
どう見ても好意的ではない相手にさえ無駄に笑顔を振りまくとは、さすがタラシ族といったところか。
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