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◇ ◇ ◇
「だからって無理やりくっつけようとしないで!」
珍しく少しだけ張り上げた柚葉の声は、だが誰にも拾われることなく歓声の中に紛れた。
体育館いっぱいにひっきりなしに響く、パスを呼ぶ声とボールの弾む音。歓声とホイッスル。
目の前の人垣――女子生徒たちの向こう。
体育館ステージ側のコートでは、2年E組対F組男子によるバスケ試合が行われている真っ最中である。
女子は女子で入口側のスペースを使ってマット運動をしている時間なのだが、すぐ横でイケメン王子の爽やかプレーを見せられては身が入るはずもない。
順番待ちの暇な女子に混ざってマット上で練習中の女生徒まで気もそぞろになり出すのにそう時間はかからなかった。
「あ、あのぅ……」
「彩香」
沖田侑希の勇姿には目もくれずに、目の前の大和撫子は静かに、だがかなり怒っている。
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