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儚げで嫋やかなはずの大和撫子が、般若一歩手前の形相に見えるのは気のせいだろうか。
ひーーーーっ!と胸中で悲鳴を上げながら、彩香はあきらめ悪くちろりと目だけを上げた。
「い、いや……でも『一方的に』じゃなく両想いだったわけでしょ?(人違いじゃなければ……。) 突っ付いてみたら沖田君だって思い出すかも……しれないし。そ、そしたらっほら――」
「思い出してくれても、昔の気持ちに戻れるとは限らないんだよ?」
言い聞かせるように、柚葉が静かに遮った。
そして。
そのまま思いのほか静かな表情を人垣の向こうに向ける。
「それに、たぶん侑くん……もう他に好きなヒトがいる」
「……え」
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