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「それがハッキリわかっちゃったら、辛いじゃない……。彼に気まずい思いさせたくないし、あたし自身すぐに吹っ切ることも……できないだろうし。だったら今のまま――ただの部員同士としてでもいいから、優しい侑くんの側にいたいなあって」
「柚葉……」
「だから、このままでいいって言ったの。わかってくれる?」
反問する隙も見出だせないくらい、綺麗に悲しげに柚葉が微笑んだ。
「……ね、彩香? そっとしておいて?」
(柚葉も怖いんだ……)
年月とともに、ひとの想いも変わる。
もちろん変わらないものもあるだろうけど。
でも、不確かなそれに縋ることを柚葉は躊躇い、沖田侑希の気持ちが明らかになることを恐れた。
本当は死ぬほど好きなくせに。彼の気持ちまで慮って……。
なんてことだ。
健気すぎて涙が出そうだ。
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