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「…………った」
「え?」
ぼそりと吐き捨てた彩香に聞こえないとばかりに耳を寄せてくる柚葉。
そこに、一瞬だけキッと睨みをきかせてやる。
「わかった! でも本心は違うからね!?」
「え、う……うん?」
こうなったら表向きだけでも彼女の想いは尊重せねばなるまい。
自称キューピッドとしては甚だ不満だが。
「柚葉がいくら遠慮したってモテ男に好きな人なんていないかもしれないしっ! 本当はガンガン体当りして誰よりも幸せになって欲しいんだからね!?」
本当は少しもあきらめてほしくなどない。
遠慮なんてもってのほかだ。
他人など端からなぎ倒して踏み越えて、誰よりも誰よりも幸せになってほしいのだ。
「てゆーか! 沖田くんにもしホントに誰かいるんだったら相手もろとも張り倒してやりたい。腹立つっ!」
握り拳をがっちり固め黄色い歓声に負けず劣らず吠え盛る彩香をひとしきり呆然と眺めていた柚葉に、ようやく満面の笑みが宿る。
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