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◇ ◇ ◇
ひとの気持ちとは難しい。
見目良い人間はどうしたって得だ。
絶対イイ思いをしているに違いない。
ずっとそう思ってきた。
ある意味万能なんじゃないか、とさえどこかで信じ込んでいたかもしれない。
ずるい、という僻みも存分に込めて。
常に自信に満ちあふれているあちら側の人間たちは、何の焦りも不安も悲しみもなく大した苦労もせず安々と世間の荒波を越えていき、そして当たり前のように幸せを掴み取れるのだろう、と。
――だがもちろん、そればかりなわけはなくて。
いくら容姿が整って輝いていても、悲しんだり悩んだり不安を覚えたり、何かをひどく怖がっていたり……泣けるほどに嬉しいと感じることがあったり――。
人間なのだからそんな感情だって当たり前に持っていたのに。
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