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だがここまで来て「とりあえず一回置こう」も負けたようで癪なのだ。
こうなったら靴を脱ぎ捨てるまで道具も見捨てないからな!と謎な姉御肌に駆られたところで、ふいに足首に衝撃が走った。
「――って、えっ!?」
気付いた時にはまたしても地べたに倒れ込み、両手と視界のほぼ全域を塞いでいた用具たちは無残にも土草にまみれて散らばり落ちてしまっていた。
「いったたた……。えええええ……」
体育館横の外壁灯は点いているが、この薄暗さでは拾い集めるだけでも一苦労だ。
心のどこかでゲンナリしながら、彩香は思わずつぶやきにも似た呻き声を上げた。
先日テニスコート脇で転倒した時と同様、またしても右膝を擦り剥いてしまったらしい。
ジャージ一枚分だけまだ痛みはマシなようだが。
――が、よかったと呑気に苦笑していられる状況でもない。
今の転倒が単なる不運でも間抜けな自損事故でもないことだけは、体勢を崩した瞬間からさすがに把握できていた。
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