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心持ち目は泳がせつつ、微妙な表情で対象に一歩近付く。
「さ、さきほどは……ドウモ、アリガトウゴザイマシタ」
片言のようなお礼にわずかに眉を寄せて、早杉翔が呆れたように口を開く。
「――えらく棒読みだな。全然気持ち込めてねーだろ」
「いえそんな。半分くらいは。――――って、えっ!?」
またもやガシっと頭を鷲掴みされ、思わず呻き声が出てしまった。
「おーまーえーなああああああっ」
「いだだだ……! なんでーっ!?」
「なんでなのか、なんでわかんねーんだおまえはよっ」
突然の攻防(一方的と言えなくもないが)再開に、いつの間にか驚愕とも羨望ともつかない注目を集めてしまっていたのだが、やはり気付かぬのは当人たちのみ、である。
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