3.闘い(?)のあとに

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 走りだしてまもなくの車内。  おまえが言うなと叱られそうなことをつぶやきながら陸部バッグを足元に置き、掴まれた頭頂部を擦りながら彩香は手すりに背を預けた。  どうせ二駅で降りるのだ。  いつもどおりドア付近に居場所を確保する。 「せっかく助けたのに怒られたんじゃ、そりゃ無理ないでしょー」  向い合って立つ柚葉が、軽く笑いながら手近な吊革を引き寄せてつかまった。  無理もないと苦笑するあたり、「だからって豹変しすぎだろっ」というこちらの主張はおそらくわかってもらえないだろう。  無駄なことはしないに限る。 「で、どうして彩香は怒ったの?」 「だって、性格ブスとか平気で言うから……」
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