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そもそも色恋沙汰なんて縁遠い世界、自分なんぞには似合わないし向いていない。
陸部先輩、篠原瑶子の手前だってあるし――。
そこまで考えてふと目を瞠る。
(あれ? アイツ、そういえば瑶子さんと一緒に帰らないんだ……?)
彼女も電車通学で、翔や侑希とは同じ方向のはず――。
まあ、今日はあのゴタゴタで遅くなったからとか、たまたま瑶子のほうに用事があったとか――そんなところだろうか、と思い直す。
……でなければ、ランチと同様、通学も別々にという主義のカップルだとか?
つい考えこみそうになって、ふるふると首を振る。
(ま、どっちにしても関係ない、関係ない)
車窓の外、暗闇に緩やかに流れていく街並みを眺めながら彩香はそっと吐息した。
(あっちの世界にあたしなんて……まるっきりお呼びじゃないんだから――)
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