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◇ ◇ ◇
「……おい」
遠ざかっていく下り電車を眺めながら、不機嫌アピール満載で早杉翔は呼びかけた。
すぐ隣に立つ相手からはなぜか何の反応もない。
「おい、侑」
「聞こえない」
「あぁ?」
「何となく言いたいことわかるから、聞かない」
素直に応えないばかりかツーンと明後日の方角に顔を背ける幼馴染に、我慢ならんとばかりにドアップで詰め寄ってやる。
「うるせえ、聞け。なんっっっっっでアレなんだ? あのちまっこい五月蝿ぇ女のどこがいいんだ? なあ?」
ほらやっぱりーなどとつぶやいて固く両耳を塞いでいるつもりらしいが、何を無駄なことを……と思う。
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