5.扉を開けると

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 何に興味を持たれてしまったのか、言いながら残りの男子生徒たちも立ち上がって次々と近付いてくる。 「い、いえ二年ですっ。じゃなくてあの……ちょっとマット、を借りにきたんですが……暗くて見えないんで、その……」 「いやいや、見ればわかるっしょ。俺ら明るくされるとちょーっと困ることしてっから」 「ついでに言うとこのままチビちゃん帰すわけにもいかないんだよねー。わかる?」  気安くジャージの肩に手を置かれ、一瞬『女子高生、体育倉庫で変死!』『名門進学校で何が!?』などの陳腐だが不吉な見出しが脳裏をかすめる。 「えっ!? そそそれは困りますっ練習あるんで! みんな待ってるし! あたしチクったりしないんで。どーかそこのマットだけ持っていかせてくださいっ。お願いしますっ!」  冗談ではない。  まだこれといって良い思いもしていないし何の人生経験も積んでないのに、そんなトラブルに巻き込まれて殺されてたまるかー! と大げさな未来予想とぶっ飛んだ思考でテンパるあまり、 「――っていうか、バレるのが嫌なら早く帰ってご自宅で吸われては?」  つい、要らぬアドバイスまで発してしまっていた。
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