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これは――冗談ではなくまずい……!
そう思った時だった。
「やめろ」
外の光が届いていない奥の暗がりから、低く抑えられた声が届いた。
この場に初めて響く声、だ。
「どうせチクりゃしねーだろ」
「えー、でもよ」
「ちょっと可愛いしほら……」
「面倒くせえことしてんじゃねえ」
億劫そうに紡がれる抑揚の少ない声に、彩香を押さえ込もうと四方から伸びていた手が離れた。
この中である程度影響力のある人物なのだろうか。
確かめようと暗闇に慣れてきた目を向けると、ベリーショートに切れ長の目が印象的な三年生男子。
二、三段しかない跳び箱に浅く腰掛け壁に凭れたまま、興味なさそうにこちらを眺め……たばこを燻らせていた。
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