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塚本と呼ばれた男子生徒が、凭れていた壁から離れゆっくりと上体を起こした。
「久しぶりだな、モテ優等生」
「……だな」
「陸上部だって?」
「ああ……うんまあ、成り行きでな」
少しだけうつむいてガシガシと後頭部を掻く翔を見、塚本が微かに笑ったようだった。
「やっぱおまえにはそっちのほうが似合ってんな」
「――」
「ほら行けよ。じゃあな」
「……おう。んじゃ」
おら行くぞっ、とガラリと調子を変えた翔に首根っこを掴まれ、彩香は何とも言えない神妙な面持ちで体育用具室を後にした。
塚本という男子生徒にお礼を言いそびれたことに気付いたのは、部屋を出てしばらく経ってからだった――。
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