12人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
◇
様々な場所や環境で、代わる代わるの人々に会うたびに思うことがある。
アナタノ目ニ、私ハドウ映ル?
ここは皆、病原菌に侵されているから。私を私たらしめるものを、みな捉えられないでいるのだ。ある意味それは、私の意図するものでもあるけれど、やはり不本意なものが多い。
「井原さんって元ヤンなんですか?」
そう聞いてきたのは、バイトの末次だった。飲食店であるにも関わらず規則が緩いせいで取ることのない軟骨のピアスを見たからだろうか。
「いや、ちがうから。よく言われるんだけど、どの辺がそう見えるの」
至ってシンプルなシルバーのリング状のボディピアスが2つ、左耳の軟骨に並んでいる私。耳たぶにも1つずつ同じ物がぶら下がっている。
「最初の頃は大人の女性って思ってたんですけど、よく見たらうちのバイトでそんなジャラジャラしてるの井原さんだけだし、なんか口調がもう」
色んな部分で損をしていると言われる私の特徴の一つ。
「それさ、単に口が悪いって言いたいんでしょ?」
「俺好きっすよ、そのサバサバした感じ」
あっけらかんとそんなことを言いのけるこの男は、バイトの中でもひと際明るく、少し頭が悪い。
「べつに育ちが悪いわけじゃないんだけどなぁ。親は意外と厳しかったし」
「あぁ、井原さん厳しいっすもんね」
「はぁ?」
思わず眉を寄せた。会話が成り立たないのを相手にするのは疲れる。
仕事に対して厳しいのは、自覚があるからいい。それだけ真剣に向き合っている分、周りにもそう要求してしまうのだろう。いや、親の厳しい躾の中で育ったからこそ、仕事で教えるときに厳しくなると言っているのか?だったらそうかもしれないが、そんなことを末次が考えて言うとは思えない。
「ほら、その威嚇する感じとか。ほかのバイトが怖がりますよ」
笑いながらそんなことを言われても、説得力はないのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!