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焦っているとは思われたくないのか、思わず力を込めては息を飲み自制する。
静かな空間にある唯一の音はその度もれる吐息のみだ。
勘をなくした指先にすら何も言わず、ただ次の行き先を黙って待っているむつみを、何度も何度も抱きしめる。
そして痛感する。これまで抱いてきた女とは温度が違うのだ。
少女はしおらしく、わずかな布を頼りに我が身を隠そうとするが、たったそれだけの中にこもる熱は、蜜蜂が集団で起こす攻撃の熱のように広がり息苦しくさせている。
「もっと、よく見せて?」
その言葉に酔いしれるむつみの表情だが、ますます深く身を隠そうとする本能は堪らなくいじらしく、由樹の自制する部分をくすぐる。
「そうやって、もっと好きにさせるんだね…」
軽くふれる唇は、やはり返事など必要ないと言っているようだ。
唇から奪った熱を首すじから胸元へ。
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