Stray cat

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「きっと、聞き慣れないと思いますよ」 微笑んではいるが、明らかに引かれた一線にむつみは肩を落とす。 「じゃあ、時間なんで」 立ち去ろうとする彼を取り巻き、行かないでと表情を変えたのは猫だけではないが、それに気付いたところで何が変わる訳でもない。 彼はそういった人生を送ってきたのだ。 慌てて立ち上がったのは引き止めたかったからではない。何故なら彼女は”世間的に妻”であり、この男に何か他の感情がある訳ではないからだ。 人の道ならぬ出逢いとはそういうものだ。 そんなはずはないと、どこかしら自分に言い聞かせる。 そして、それに酔いしれる。
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