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修哉が身体に鞭打つように退室した後、むつみは橙色のノートを手に取った。こんな日の気持ちは書き留めておきたい。
けれど、いくつかの文字をのせてみるものの、どうにも気になって仕方ない事がある。
もうひとつのノートだ。
それは大人びた茶色のノートカバーがかけられ、厚さを見るとどうやら二冊であるようだ。
他人の物を覗き見るのはルール違反だと思い、ここまで開かずにいたのだが、気持ちの開放感があり気が大きくなっていたのだろうか。むつみはそっとそれを開いた。
向かって右側のノートはクリップがかかっている。手っ取り早く開くであろう左のノートをそっと開く。
「これって……」
むつみは手を口元にし驚いた。
そこには養蜂に関する情報があり、また個人情報も記されている。おそらく、仕事に必要なものだと察すると、ガウンを羽織りナースステーションを目指した。
いたずら心で手元に置いた事を後悔しながらたどり着くと、ちょうど手の空いていた担当のナースに声をかけた。
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