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二度と訪れる事のない幸福。
これが、二人が望んだ痛みだ。快楽と引き換えにして歩み寄る死への恐怖と不安は、二人をより一層燃え上がらせる。
しかし万が一にでも、最愛の彼女のその命を、この手が奪っているとしたらと不安が押し寄せる。
そんな不安を彼女に悟られないように、男は喉元に刃をあてた。
「誰にも、渡さないんだから……」
この痕は、消えないで欲しい。
「ゆき、く……んァ………ッ!」
喉元に与えられた強い痛みは肩からゆっくりと下腹を滑り、彼女の全身に麻酔をかける。
他の誰にもふれさせないと約束をしたその場所は、むせ返るような甘い蜜の匂いであふれている。
今も、あふれている。
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