異変

2/2
前へ
/11ページ
次へ
「お父さん、夜なのに昼だよ」 坊やの表現はあまりに的確だった。 日が変わって少ししたころ、俺は窓越しの光に叩き起こされた。 寝ぼけた頭で外に出てみると、あまりの眩しさに思わず瞼をぎゅっと閉じた。 寝ぼけは一瞬で吹っ飛んだが、おかげで混乱は加速した。 訳が分からず目すら開けない状況の中、おれは10秒ほどただ無為に立ち続ける。 薄く目を開けやはりまぶしくて閉じ、を十度ほど繰り返すとだんだんと光に慣れていった。 ようやく開けた視線を空に向ける。すると間もなく光源が知れた。 普段は星すら濁った空気に阻まれる東京の空で、ただ一点が太陽のごとき輝きを放っていた。 遮蔽物が多く狭い空の、尚そのほんのわずかな一点。 その一点だけが、ただただ激しく主張している。 赤い光だった。 眩しすぎて直視できないが、微妙に明滅しているように見える。 紅蓮の炎を限界まで煮詰めたら、こんな塩梅になるんじゃないか、そんなひかりだった。 坊やもこの光では寝ていられなかったのだろう、扉を少しだけ開けて不安そうに俺を見ていた。 「眩しいよ、お父さん」 「ああ、そうだね」 「夜、なくなっちゃったの?」 「大丈夫、すぐなんとかなるよ」 当然そんな保証はない。 自分が一番混乱しているのに、不安そうな坊やを見るとすぐ自信ありげな言葉が出る。 俺も父親が板についてきたと思う。 もうお休み、と坊やを一と撫でしてリビングに向かった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加