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「お父さん、夜なのに昼だよ」
坊やの表現はあまりに的確だった。
日が変わって少ししたころ、俺は窓越しの光に叩き起こされた。
寝ぼけた頭で外に出てみると、あまりの眩しさに思わず瞼をぎゅっと閉じた。
寝ぼけは一瞬で吹っ飛んだが、おかげで混乱は加速した。
訳が分からず目すら開けない状況の中、おれは10秒ほどただ無為に立ち続ける。
薄く目を開けやはりまぶしくて閉じ、を十度ほど繰り返すとだんだんと光に慣れていった。
ようやく開けた視線を空に向ける。すると間もなく光源が知れた。
普段は星すら濁った空気に阻まれる東京の空で、ただ一点が太陽のごとき輝きを放っていた。
遮蔽物が多く狭い空の、尚そのほんのわずかな一点。
その一点だけが、ただただ激しく主張している。
赤い光だった。
眩しすぎて直視できないが、微妙に明滅しているように見える。
紅蓮の炎を限界まで煮詰めたら、こんな塩梅になるんじゃないか、そんなひかりだった。
坊やもこの光では寝ていられなかったのだろう、扉を少しだけ開けて不安そうに俺を見ていた。
「眩しいよ、お父さん」
「ああ、そうだね」
「夜、なくなっちゃったの?」
「大丈夫、すぐなんとかなるよ」
当然そんな保証はない。
自分が一番混乱しているのに、不安そうな坊やを見るとすぐ自信ありげな言葉が出る。
俺も父親が板についてきたと思う。
もうお休み、と坊やを一と撫でしてリビングに向かった。
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