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世間と謎
翌日、世間の話題は謎の光一色だった。
どうやら世界中で観測されているらしい。
俺たちが眠っだあと光は西に沈み、各大陸の人々を寝不足にして回ったようだ。
正体不明の光への恐怖やら安眠を妨げられた苛立ちやらを燃料に、人々は血眼で光の情報を求めた。
あの光はなんだ? 今日はちゃんとした夜になるのか?
マスコミはその要望に全力で答える構えのようだ。
朝.坊やを幼稚園に届けてからコーヒー片手にテレビをつけると、普段はニュースを終えているはずの時間帯でも緊急特番が組まれていた。
「我々の認識では、直ちに危険はないと考えております。」
ごちゃごちゃした経歴の、パリッとしたスーツの中年が言った。
先日の眠そうな電話の人物とは違う声だ。やる気がないから変えられたのだろうか。
「その根拠はどう言ったものですか?」
「こう言った事例は歴史を振り返ると間間記録されております。しかしそのどれも直接的な被害をもたらすものではありません」
「なるほど。あの光の推測や、いつ光が消えるかについてはご意見ございますか?」
「はっきりしたことは未だ不明です。国民の皆様にはどうか無為の噂に踊らされず、落ち着いて行動して・・・」
口ぶりから察するに、官民の官に属する偉い人なんだろう。
言いたいだけのことは言わないスタイルだな。
それはそれで正しいのだろうが、中年の言葉はどうも空虚に聞こえた。
この人が言ってはいけないことの中に、言わなければいけないことが混じっているような、そんな気がする。
ほのかな隠し事の匂い。
昨日の坊やもおれのこんな気配を感じ取ったのだろうか。
ならこの感覚は捨てちゃいけない。なにせ俺は坊やの父親だ。
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