ナンセンス

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     …………  ぱらり、とそのページをめくる。  全身コート、顔はバンダナで覆われた男が、その日記の最後のページを見つめる。  早くしろ、と外から急かす声。  あわてる必要なんてない。  ここにはもう誰もいない。  割れたガラス。埃がかぶっている。色あせている。  盗るものは盗った。大したものは無かったが。  次の家に行かなければ。次の無人の家に。とうに誰もいなくなった家に。その次も、その次も。  脇に置かれたペンを持って、男は次のページを綴る。   『 2022/12/03   病気は治った。   光はまだ見えない。   』       /了/
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