第10章 あなたと二人きり

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胸が悪い、とでも言いたげに顔を顰めた。料理が次々と運ばれて来てしばし話が中断される。わたしに手早くこれも食えあれも取れ、とさっと取り分けて(わたしにこういうことさせてくれる隙とか全然ない。考えようによっては可愛げがない)目の前にずらりと並べてくれた。有り難く手を合わせ、箸をとる。 「男って人によるけど案外ああいうとこがあって。友達同士で変な乗りになると結構ストップがかからなくなるっていうか、歯止めが効かなくなる。一人おかしな奴が混じっててそいつがその場をコントロールし出すと周りも引きずられがちになるんだよな。よくあるだろ、男の集団が女の子を引きずり込んでアルコールとかで何とかしたりとか。あんな感じなんじゃないかな」 「ああ…、事件とかになったりするもんね、そういうの」 わたしは遠慮なく取り分けてもらった料理に次々と箸をつけた。…確かに、普段わたしが食べてるものとはだいぶ素性が違う。 「すっごく美味しいです、これ。わたしの知ってる炒飯とか餃子ではないですね。遠い親戚かな?っていうくらい。…あの人たちはどういう職業の人たちだったんですか。クラブのメンバーとしては割に若かったですよね。三十前後?」 ちょっと目許を緩めてわたしを見て、いっぱい食え、ともっと皿に乗せようとする。いえいえ、今ある分が空になってからでお願いします。 「芸能関係だったかな。それともベンチャー系の経営者?なんかその辺の、今ひとつ堅気じゃない職種の連中だったよ。普通の勤め人じゃないことは確かだ。まぁ、あの年齢のサラリーマンにあそこの会員権を持つのは無理だな。収入的にも立場的にも」 「ああ、なるほどね。わかります」 わたしは頷いた。確かに若いって言えば若いんだけど、逆に言うといい歳して学生仲間みたいな変な乗りだった。何となくまだその頃の雰囲気を引きずってるっていうか。 一度も普通の会社勤めしてなくて、学生の頃の意識のままでベンチャーとかやってると案外ああいう乗りなのかも。三十くらいになってたらもう少し大人でもいいんじゃないか、と思わなくもなかった。 きっと普段の仕事の時はあんなじゃないんだろうけど(と思いたい)。遊んでる時は理性も飛んでるし、地金が出ちゃうのかな。 「あそこの会員さんって結構大人な方が多いから。なんか、いろんな意味でガキっぽくてびっくりした。きっと学生の時からの知り合いとかなんでしょうね。
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