第10章 あなたと二人きり

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一気に喋って唇を湿らすようについグラスを口許に運ぶ。時折底知れない部分が垣間見えないこともないけど。それはわたしや他の女の子たちに向かうことは決してない。むしろ、わたしたち弱いものを守るためにそれはあるんだってわかってる。だから恐れたりはしない。それを真っ向から受けなきゃならない羽目に陥った人物については気の毒というより他ないが。 そんな内容をぼそぼそと不器用に説明しようと試みると、彼はちょっと複雑そうに顔を歪めてみせた。 「それは信頼してもらってると受け取っとくけど。でも実際のとこ、そう上手く行ってるとは言えないな。気持ちとしてはお前をちゃんと守るつもりでいるんだよ、どんなことからも。でも現実はさ…。あんな珍気な奴らにお前をいいようにされて、すぐに助けることもできなくて。ただあんな中継を延々聴かされる気分って言ったら」 情けない、と小さな声で呟きながらも落ち込むよりむしろ怒りが沸沸と湧き上がってきたらしい。ゆらり、と彼の周辺の空気が揺らいだように感じる。やっぱ怖い、…かも。 「だから、生中継なんかしてもらわなきゃよかったのに。どうせ駆けつけられないなら聴いてても苛々するだけじゃない?後で高城くんとわたしから話だけ聞けば済むのに」 宥める口調でそう言うと、彼は目を尖らせて憤然と答えた。 「そんな、お前が現に酷い目に遭ってるってわかってるのに。自分だけ目と耳を塞いで楽しようなんて思わないよ。知らない方が却ってつらいってこともあるし。…本当に可哀想なことした、と思ってさ。俺がああいう奴らだって見抜けなかったのが原因であんなことに…。謝ってもどうにもならないけど」 「やっぱり気にしてる。…もういいよ、別に加賀谷さんのせいじゃないじゃん。加賀谷さんにわからなかったんなら多分誰だって予測できないよ。あいつら、ああいう部分はこれまでクラブでは見せてなかったってことでしょ」 彼は眉根を寄せて厳しい顔つきで頷いた。 「こないだも言ったと思うけど。連中はお互いに推薦し合って会員になったから、元々知り合いなのはわかってた。でも、今まで連れ立ってクラブにやって来たことはなかったんだ。各々個別に顔出してたから、そんな中では穏当な振る舞いだったし特に問題なところもなかった。それが外に出て、仲間内でつるんで悪乗りするとあんなことになるなんてさ」
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