第10章 あなたと二人きり

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だから変なサークルみたいな乗りだったのかな。ああいう人たちはつるんだらいけないんでしょうね、この手の場で」 「そうだな、よく最近ニュースになる大学のサークルで事件を起こす連中みたいな雰囲気だったな。アルコール厳禁にしてもあれだから…。脳内で天然に変な物質が分泌されてたとしか思えない。男ってやだな、ああいう時」 「そんなことないよ。加賀谷さんだって男の人じゃん」 わたしは心の底から言った。男がみんな同じなんて思わない。加賀谷さんも言ってた、俺がここに一人いるってことはこの世界にあと百人くらいはこういうのが存在してるってことだろって。…例えば。 あの人とか。…高城、泰河くん。 彼はわたしの胸の内に灯った暖かい小さな火には気づかず顔を顰めて吐き捨てるように呟いた。 「だからって男には俺みたいな奴も結構いるとかあまり当てにしない方がいい。概ねああいう連中が大勢と思っといていいよ。何かあってからじゃ遅いからな。油断するな、世間一般の中では何があってもつるんだ集団の男を相手にするなよ絶対。まず間違いなくこの前のあいつらより酷い。そういうもんだと思って」 ちょっと食欲が失せそうな話題だ。 「それはまぁ。…以前から何回も注意されてるから。外の世界の複数セックスはクラブの中のとは全然違ってるってことでしょ?」 彼は硬い表情で頷いた。 「そう。あそこは温室だ。人工的な環境なんだよ。以前の学生クラブの時からそうだ。最初から禁止されてるものが一杯あった。それでも気を抜いてると強制や不本意な行為が発生する。お前は俺の目の届かないところであれをしたら絶対駄目。よくわからない変な男にちょっかい出されそうになったらすぐ知らせろ。ぱっきり折ってやるから、一撃で」 「真剣なのも駄目なの?」 戦々恐々としつつ思わず尋ねてしまう。彼はちら、と感情の動きの見えない目つきでわたしを一瞬検めるように見た。 「真剣はいい。お前さえ受け入れる気があれば。…でも、そうだな。一応どこのどんな奴かは伝えろ、あまり深い関係になる前に。身許はちゃんと洗っておきたいから。付き合って問題のない相手かどうかは確認させてもらうよ」 「ふぇ」 我知らず変な声が喉から漏れる。少し冷めてしまったスープを飲みながら、わたしの今の状況はどうなのかな、『深い関係になる前』だよね、まだ?と自問自答する。
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