第10章 あなたと二人きり

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自分の部屋でセックスはしたけど、成り行き上不可抗力に近い。問題はそのあと二人でご飯を食べたことと、最後に我慢できなくてもう一度身体を重ねたこと。それから、今度の土曜日に次の約束を取り付けたこと…。 「それにしても。俺だったら午前中が終わって昼飯の時点で奴らを現地に放り出して強制的にお前だけ連れ帰ってるな。やっぱり黒服に任せるとそこら辺判断が甘いんだよ。帰り道、無駄にお前を苦しめる羽目になったじゃないか、全く」 まだ納得いかないように零す加賀谷さんの声にわたしは我に返った。これって、高城くんに対する文句だよね? 「いやそうは言ってもさ。黒服だって会員に対して間違いがあったらいけない訳だし。そこは難しい判断だと思うよ。すごく厳しく注意はしてくれてたよ、何度も」 やはり庇わざるを得ない。実際、できるだけのことは一生懸命してくれてたと思うし。 「とにかく一刻でも早くわたしを東京まで連れ帰りたい一心だったんじゃないの。会員をその場にきっぱり置いてくるなんて判断、普通できないよ。てか、そんなこと言うんならさ。加賀谷さんが自分で来ればよかったじゃん。どうせ心配で仕事もあまり手につかなかったんでしょう。離れたとこでやきもきしてるくらいならさ」 彼は鱶鰭を箸で綺麗に割りながらきっぱりと断言した。 「絶対やだ、お前が何人もの男に代わるがわるやられてるとこを間近で見るなんて。そんな声背中で聴きながら運転するなんて真っ平だね。俺には無理だな」 「どうせモニターでいつも全部見てるじゃん」 加賀谷さんは料理に集中してわたしの方は見向きもせずに答えた。 「モニター越しとは全然違うよ。そんな状況で何時間もいたら本当、最悪だ。想像するのも嫌だな」 想定以上にストレートな答えにわたしは困惑した。でもまぁ、そうか。一方でわたしも、あの時の運転手が加賀谷さんだったと想像すると。 マジで全然無理。ちょっとぞっとしない。あんな密室で、後部座席で延々やられながらその様子をつぶさに耳にされるなんて。 いつもはモニターされてるって頭のどっかでわかってても離れてるから割り切れる。以前、バックヤードで変な気を起こした黒服に上と下からやられてる現場を見られた時も正直なんとも言えない気分だった。あの時の加賀谷さんは意にも介さず平然とした様子だったけど。 だからこっちは見られたくないけど向こうは特に気にしてないかと思ってた。
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