第10章 あなたと二人きり

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案外そうでもないのか。やっぱりそういうとこの意識、この人わたしの『保護者』なんだな。父親とはさすがに言わないけどまぁ兄貴みたいな感覚なのかもしれない。 『お兄さん』だったら『妹』のそんな場面、間近で事細かに見るのは嫌だよね。わたし、この人に要らん負担かけてるんだろうな、実際のところ。 「ごめんね、いろいろと不愉快な思いさせて」 ちょっとしおらしく謝ると、彼はいとも平然とわたしに点心をひょいひょいと取り分けながらあっけらかんと言った。 「大丈夫だ、距離さえちゃんと保てれば。もうそういうもんだと割り切ってるから、そこは」 「…そですか」 わたしは肩を窄めた。そうは言ってもいたたまれない気はするけど。そこまでしてわたし、この人の見てる前でやらなきゃいけないのかな。 ふと微かな疑問が過ぎる。わたしに今、まだあれって必要な行為なのかな? そこまで考えて反射的にぎゅっと蓮華を握りしめる。いや待て逸るな。わたしの生活は何か大きな変化があった訳じゃないんだ。ただ、黒服の子が食生活と健康を気遣って週末にご飯を作りに来てくれる約束をしただけ。それで何かが変わったとは言えない。 わたしのいい加減な暮らしとあまりの雑さを見かねて同情してくれてるだけなんだろうし。きちんとした性格の彼からしたら単に放っとけないだけなんじゃないかな。 「まあ、まだ身体も気持ちもきついだろうから今週はいいよ。気にせず休め。当然週末も受けなくていい。…っていうか、出張は当分見合わせだな。ああいうことないようにしっかり予防策を講じるまではしばらく再開できないから。どうする、来週来るか?普通に火曜?」 「うーん…」 わたしは箸に持ち替えた手を止めしばし考えた。今は水曜。あれから三日経ってショックは薄らいでるとはいえさすがにまだ性欲は全然湧いてこないけど。 来週の火曜ならまだ一週間近くあるし。その頃には今より更に平常運転に戻れてるだろうなとは思う。…でも。 やや気重に考え込むわたしに向かって彼はデザート何か選べ、とメニューを差し出しつつ淡々と付け加えた。 「なんか気が進まないってのは無理ないけど。まああんなこともあったことだし、むしろ早めに普段のサイクルに戻した方が後遺症も少なく済むとは思う。尤もクラブをもう卒業したい、って腹が決まったんならそれはそれだよ。でもそれもある程度自分の状態を見極めて慎重に判断した方がいいとは思うけど。
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