第10章 あなたと二人きり

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ああいう解消の仕方を止めた分、別の形で何か代償行為が必要になってたらそれも安全性がどうか検証しなきゃならないし。そこはお前一人で判断しない方がいいかも。まぁ慌てることないよ、止めるのはいつでもできる。とりあえず身体と心に特別問題が発生してないなら、間隔は開けすぎないよう一回顔出せ。それで様子見よう」 言ってる内容は尤も至極だ。わたしは肩を竦め、 「マンゴープリン、お願いします」 とだけとりあえず返す。店員さんを呼んで自分の杏仁豆腐と一緒に追加オーダーを済ませてから彼は感情を伺わせないクールな顔つきでわたしに改めて向き直った。 「じゃあまあ、とりあえず来週火曜な。例によって『夜のファン』の連中には周知しとくから、ぶっちぎるなよ。…あ、それからその前、今週中にクリニック予約しとくぞ。お前今月の検診まだだったろ。ピルまだあるよな?飲み忘れてないか」 そう言えばそうだった。わたしは首を縮めた。クラブの女の子たちは全員、契約してるクリニックで月に一度身体の状態をチェックしピルを処方してもらう。その費用はクラブで負担してくれる。行為は全てゴム装着絶対必須だがそれは主に病気の感染予防のため、避妊はそれ任せって訳にいかない。 毎月のことなんだけどうっかりしてると忙しさに取り紛れて忘れそうになり、加賀谷さんからチェックが入る始末。自分の身体のことなんだからちゃんと管理しろよ、と我ながら思わなくもない。 「ありがとうございます。じゃあ、明日の終業後で。仕事終わり次第こちらからクリニックに連絡入れます」 「了解。そう伝えとくよ、向こうには」 加賀谷さんはちょっとほっとしたようにそう言って、わたしが注いだジャスミン茶を軽く吹いて冷まし一口飲んだ。思えばあんなことのあった後だから、一回ちゃんと医者に診てもらって欲しいって頭もあったのかなってその時気づいた。 わたしは内心で肩を窄める。この人、本当にいろいろと気が回る。わたしは心配してもらいっ放しだな。いつまでも負担ばっかかけてる訳にいかないってわかってはいるけど。 とりあえず、生活のリズムを日常に戻す努力をしよう。落ち着いて、目先の変化にとらわれず。本当に何かがわたしの身に起こりつつあるのかどうか。 見極めるのはそれからだ。 「あ…っ、ん、…もぉ」 わたしは切なく喘ぎ、身悶えた。ベッドの上で仰向けになり、くすんだ低い天井を見上げている。
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