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でも欲情で霞んだ目は、見ているものの情報を脳に殆ど送っては来ない。ただガラスみたいにそこにあるものを映してるだけだ。
大きく開かされた脚の間に彼の頭がある。熱に浮かされたように夢中でわたしのそこを舐め、敏感なところを舌先で弄ぶ。声を抑えきれないし、どうしようもなくて腰も動いちゃう。固く尖らせた舌先を押し込まれ、びくんと痙攣するよう仰け反った。
「…あ…っ、だめ」
奥が切なくぷるぷると震え始める。高城くんに、そんなこと…、されたら。
わたしは手を伸ばして彼の髪をもどかしくかき乱した。あたし、一人で先に…、いっちゃう…。
今日は二人で一緒にご飯を作ろう、ってことになっていた。スーパーにも連れ立って赴き、相談しながら買い物して。お互い料理は手慣れてないのがわかってるので無理のないメニューから、という理由でとりあえずカレー。これならわたしでもできそう。
とは言うものの、塊の肉を大きめに切って下味をつけてまず表面だけ焼いて固めるとか、じゃがいもは煮溶けるから同じく表面に軽く焼き目をつけて取り出して最後に入れるとか、わたしには思いつかないことばっかりだ。隠し味にみじん切りのパプリカを入れたりほんの少し味噌を入れるとか、料理に精通した家族から入れ知恵されてきた彼の知識には全然敵わない。
でも、お互い不器用な包丁使いでわあわあ言いながら料理するのはキャンプか合宿みたいに楽しかった。ぎこちなく刻まれたトマトやきゅうりにとにかくドレッシングをかけてサラダを作り、出来上がったカレーと一緒に食べる。わたしは感動してテーブルの向かいに座ってる彼の顔をまっすぐに見た。
「すごく、美味しい」
彼は裏心の感じられない柔らかな笑みを浮かべてわたしの目を見返した。
「うん、よかった。美味しくできたね」
高城くんの穏やかな反応にわたしは深い感激を心の奥に押し込める。彼にはきっとわたしがどんなに揺り動かされたか本当のところはわからないに違いないから。
気の置けない相手と一緒に料理をして、それを食べる。そんなこと自体人生で初めてなんて。知られたらまたきっと同情されてしまう。ただでさえ捨てられた猫にうっかり手を出した責任感から世話をしなくちゃ、と彼に思われてるに決まってるんだから。
親切なこの人に、これ以上精神的な負担をかけてはいけない…。
そう思って無難な程度に喜びを抑える。
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