未熟なもので

3/9
前へ
/179ページ
次へ
「誰も認めてくれないと、虚しくなっちゃうんじゃない? 僕の仕事はギルマスだけど、彼らの仕事は討伐でしょ? みんな自分の仕事をしてるわけだから、それを褒めてくれって言うのがクリスは気になるんじゃないの?」  ジルの言葉を聞き、腑に落ちた。  そうか、戦う自分たちの仕事こそ至高、って態度が嫌なのかも。 「貴族として生まれ、仕事を選べず、かといって俺みたいに飛び出すこともできず、延々と戦うのに疲れちゃったんですかね」 「そこへ現れた魔法使いに、希望を見出しちゃったのかもねー」 「あれも相当ですよ。強いから戦えって、なら国王が強かったら戦えって言うのかよ、みたいな」 「今回に関しては、リオがスラム出身だっていうのが悪く作用したよね。魔法使いよりスラム出身が記憶に残って、好きに扱っていいと勘違いさせてしまった」 「……もう少しで溝を一気に浄化するとこでしたよ」 「ああ、あれはないよね……」  ジルと二人で、微妙な表情で遠くへと視線をやる。  下水なんか飲んで、よく死ななかったよな。汚物が流れてるんだぞ? それでも生きるために、啜るしかなかったんだよな。  ……よし、今夜は俺がうまい飯を作ってやろう。 「じゃあ酒買って帰ります。今夜はリオに、俺お手製ハンバーグを作らないと」 「クリスはハンバーグしか作れないって、リオがぼやいていたよ?」 「しかじゃないです! 作ろうと思えばなんでも作れますから!」     
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1286人が本棚に入れています
本棚に追加