快適な生活

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 俺は生まれた時から自我があって、それに戸惑い幼少期をすごした。子供になろうとしたり、大人になろうとしたり、曖昧でどっちつかずの状態だった。  今は、自分の精神が幼いことに気がついている。俺は17のまま、精神年齢が止まっていた。成長できていなかったのだ。  感情を押し殺していたから、他人の感情がわかりにくい。触れ合いに感情がなかったから、孤独だと感じてしまう。  世界が違うせいもあるのかもしれない。心が拒絶しているのかもしれない。  それでもアルが、俺に成長を促してくれた。短い時間だったけど、相手との触れ合いに心が動き、それを温かいと感じさせてくれた。  生きていることを、教えてくれた。  俺にとって大事なのは、この生活。俺を気にかけてくれるジルがいて、俺に会いに来てくれるリオがいて、寂しくなったら騒がしいギルドへ行き、悲しくなったら家に引きこもれる。  この生活は、アルが教えてくれた温かさを感じさせてくれる。それが余計にアルを思い出させるとしても、それでも、その分だけ胸の温かさが際立つ。  会いたくて、寂しくて、悲しくて、苦しくて、なのに愛しくて。その感情が俺を生かしてくれる。  背だけじゃなく、きっと俺は心もリオに抜かされている。     
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