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「……そうか。向こうの課長の元で精々励むことだな」
梶恭一は臨時業務最高責任者という肩書きだけでなく、その力もとてつもなく強い。
だから魑魅魍魎などの人外の存在が封印箇所から出てきた時、彼はたったの1人であっという間に消し去ることが出来る。
自分の力を具現化させた刀で。
私の父もそうだった。
「それで……」
「それで、何だ?」
真っ直ぐに無言のまま見つめてくるものだから、不覚にも緊張感がはしった。
茜ごときに、この私が緊張するなんて。
そう思っていると、ようやく茜が意を決したかのように告げた。
「それで俺、ずっと鬼頭さんのこと守りますからっ。化け物達に拐われないように」
「ずっと……だと?」
ずっと美姫のこと見守ってるからな。
きっと、いつか父さんより強い男がお前を守ってくれる。
永遠の別れとなる前に父が告げた言葉が過る。
「はい、ずっとです」
「本当の、本当に、ずっとだな?」
茜ごときに。冴えてるんだか冴えてないんだかよく分からない草食系男子にずっと守るからとか言われても。
なのに何だ、この安心感とやらは。
こいつが最強スペックの持ち主だから?それとも、物凄く真剣に考えてくれている感じだから?
こんな気持ちは生まれて初めてだ。
くすぐったくて、胸が熱くなって。
不覚にも、泣きたくなるじゃないか。
「当たり前じゃないですか。俺がこれからもっと強くなりさえすれば良いんでしょ?課長はもう歳だし、綾小路さんもこれ以上伸びしろ無さそうだし。せめて俺が定年退職するまでは、仕方ないんで頑張りますよ。だってその頃には、鬼頭さんもヨボヨボのおばちゃんになって力衰えてきているだろうから、封印箇所への影響も少なくなるの間違いないし」
ーー前言撤回。
「誰が将来ヨボヨボのおばちゃんになるだと?」
言葉のチョイスはつくづく重要だと、常日頃から自分で言っているだろう、茜?
「ぐあっ。痛っええぇ!!」
私は手刀が振りかざされると咄嗟に頭を防御した茜のお腹に、渾身のボディブローを御見舞いしてやった。
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