エピローグ

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「つまり、トレイス(記録人格)が脳内でカウンセリングをしていたと?」 もう何日も眠っていない。 私はこの論文を臨床学研究で発表するため全てをかけてきた。取り扱った案件は非常に繊細なもので、神経をすり減らす日々だった。 「その通りです。彼もまた人格障害があり、さらなる人格達の不幸を生み出しました。その葛藤を処理する、いわば懺悔のような気持ちがあったとみえます」 「複雑すぎて共感は呼べないぞ。今後の参考にもならない特殊な案件だと除外される」 どれだけ自信のある論文についても、発表に至るまでにはボスの見解を伺う必要がある。所詮は臨床施設に在籍するしがない臨床心理士だ。 「脳内であるからこそ行えたカウンセリングがあったと思います。だからこそ、子供人格の容姿の変化についても包み隠さず書いたんです」 「あり得ないな」 「彼らは……っ!」 「月弓、また変人扱いされるぞ。発表は見送れ」
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