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「匠、たくみくーん、これは一体どういう事かな?」
篤司がニヤニヤしながらまとわりついてくる。
「お兄ちゃんが聞いてあげるから、ちゃんと言ってごらん」
匠はため息をつきながら、篤司の肩を軽く押して距離を取った。
━━10年以上篤司と一緒に登校しているが、こんなに鬱陶しいと感じたのは初めてだ。
「煩いよ」
「酷い。お兄ちゃん泣いちゃうよ」
しくしくと泣いた振りをする篤司を見ながら、匠はこうなった原因である男の顔を思い浮かべた。すると、昨夜の溶けるようなキスを思い出してしまった。
柔らかい舌の感触、頭に回された骨ばった大きな手、そして好きだと囁く甘い声……。
抱き締められる事があんなに幸せだなんて知らなかった。
笑顔を浮かべた匠の頬を篤司がむにっと引っ張ると、現実に引き戻された匠が再ムッとする。ふざけてじゃれあっているような行為にも関わらず、二人の間には不穏な空気が流れていた。
「痛いから離して」
「嫌だ。俺を無視して何考えてたの?それに、まだこれの意味を説明してもらってないんだけど」
篤司が匠の目の前に突き出した携帯の画面には、今朝送られてきたメッセージが表示されている。
『匠と付き合うことになった。高浜には感謝している。ありがとう』
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