はじまり

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危ないと思った時にはすでに遅く、左手の人差し指にはぷっくりと血が盛り上がっていた。 「あー、やっちゃった」 匠(たくみ)は呑気に呟くと調理台に備え付けられた蛇口から水を出し、躊躇なく人差し指を突っ込んだ。すると… 「何やってるんだ」 突然耳元で怒鳴られて、延びてきた手が蛇口の水を止める。 「お前バカなの!血が止まらなくなるだろ」 左腕をぐいっと掴まれ、人差し指にキッチンペーパーを被せて上からぎゅっと握られた。 「イタッ」 匠が文句を言ってもお構いなしに、掴んだ指ごと腕を上げて上下に数回振られる。 「こうやると血が止まりやすいから」 この時初めて匠は自分の指を掴んでいる奴の顔を見た。 まさか……。 匠は自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。 「危ない」 そんな声が聞こえた気がしたが、匠はそのまま意識を失った。
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