406人が本棚に入れています
本棚に追加
危ないと思った時にはすでに遅く、左手の人差し指にはぷっくりと血が盛り上がっていた。
「あー、やっちゃった」
匠(たくみ)は呑気に呟くと調理台に備え付けられた蛇口から水を出し、躊躇なく人差し指を突っ込んだ。すると…
「何やってるんだ」
突然耳元で怒鳴られて、延びてきた手が蛇口の水を止める。
「お前バカなの!血が止まらなくなるだろ」
左腕をぐいっと掴まれ、人差し指にキッチンペーパーを被せて上からぎゅっと握られた。
「イタッ」
匠が文句を言ってもお構いなしに、掴んだ指ごと腕を上げて上下に数回振られる。
「こうやると血が止まりやすいから」
この時初めて匠は自分の指を掴んでいる奴の顔を見た。
まさか……。
匠は自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。
「危ない」
そんな声が聞こえた気がしたが、匠はそのまま意識を失った。
最初のコメントを投稿しよう!