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次の日、匠は眠い目を擦りながら授業を受けていた。匠がそんなに眠そうなのが珍しいのか教師達が次々に心配して声をかけるので、午前中の授業が終わる頃にはクラスメート全員に心配される事態に陥っていた。
「矢萩って実は人気者だったんだな」
前の席の石川が匠の机に紙パックの苺ミルクを置いた。
「そんなこと、あるわけないだろ」
匠は反論するが、机の上を見たら一目瞭然だ。
「これを見ても?蒟蒻ゼリー、カロリーメ○ト、青汁、オレンジ、飴、ビタミンドリンク、栄養剤、チョコレート、それにおでこの冷却剤まであるよ」
石川が匠の机に置かれた品物を確認する。これは昼休みに入った途端に、クラスメートから貰った品々だ。匠がいつものように買ってきたサンドイッチを鞄から出したら、「そんなのばかり食べてるから倒れるんだよ」とクラスメートから次々に手渡されたんだ。
「で、俺からはこれ。わざわざ買ってきたんだから、ありがたく受けとれ」
石川の差し出した苺ミルクは、匠の好物だった。勉強で疲れた時にあの甘さが調度良くて、たまに校内の自販機で買っている。
「ありがとう」
すぐにストローを指して一口飲むと、優しい甘さが口に広がりホッとする。
「それより大丈夫なのか?お前がそんなに疲れた顔でいるなんて初めてだから、みんな心配してるんだぞ。午後から早退した方がよくないか?」
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