苛立ち

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「大丈夫だよ。ちょっと寝不足なだけ。それよりもこれ、何かお返ししないとダメなのかな」 匠は机の上の品々を見ながら呟いた。 「別にいいんじゃないかな」 「そんな訳にはいかないだろ。じゃあ、あれを引き受けるよ」 「あれって、実行委員?」 「そう。決めないとダメだろ?」 匠の高校は6月に体育祭がある。体育祭と言っても実際は球技大会だ。バレーやバスケやサッカー等に生徒が出て競う。その実行委員をクラスから一人出すことになっていた。 けれど、これが問題だった。実行委員は結構忙しい。何度も放課後に話し合いをした上に、前日の準備、当日の進行、そして片付けまでしないといけないんだ。 「模試もあるのに大丈夫なのか?」 「何とかなるよ」 「やってくれるとありがたいけど」 特進クラスは人数が少ない。だから、試合も一人がいつくも出ないといけない。運動が得意な石川はサッカーとバスケとバレーに出るから、実行委員まで手が回らないんだ。 「その代わり、試合は任せたから」 匠がにこりと笑うと、石川が仕方ないという風に頷いた。 「了解。頑張るよ」 その答えに満足した匠は、苺ミルクを全て飲み干して、サンドイッチを食べ始めた。
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