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調理実習から1ヶ月が経ったが、あれ以来匠は育哉と顔を合わせていない。
1組と12組の教室は南校舎と北校舎に別れているし、1組が10時間授業なのに対して12組は6時間目の後20時近くまで毎日練習している。朝練も毎日あり、登校時間が被ることもない。
あの時育哉が待っててくれたように、どちらかが努力しなければ会うことはないんだ。
そうか。1ヶ月も会わないという事は、育哉も匠に会う気がないということなんだ。
その事に気づき、匠はほっとした反面少し寂しさも感じていた。きっと育哉も、あの時の気持ちが間違っていることに気づいたんだろう。
これでいいに決まってる。男同士でキスをしたりするのはおかしな事なんだから。
それに、育哉は父の再婚相手の子供だ。母の気持ちを考えると、育哉と仲良くなんて出来るはずがないんだ。
ぼんやりしてると時間なんてあっという間に過ぎていく。明日は体育祭の準備で明後日は本番。それが終わると模試がある。
匠は丸井先生から貰った役割表を鞄に入れると、ベッドに入った。
携帯を見ると、母からおやすみのスタンプが届いていた。朝以外ほとんど顔を合わすことがない母との唯一のコミュニケーションは、このメッセージアプリだ。匠もおやすみのスタンプを送り、無理しないでねと一言つけ加えた。すると、すぐに母から了解のスタンプが届く。
それを見て、匠は満足して目をつぶった。
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