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「分かってるって。俺は高浜 篤司(たかはま あつし)。匠とは小学校からの親友なんだ」
篤司は自慢げに言うと、ズボンを捲った。
「俺のは絆創膏を貼ったから大丈夫。ところで、先生を呼びに行った奴は?」
先生は篤司の膝をちらっと見て、笑いながらもう一枚絆創膏を貼った。
「傷の上に貼らないとね。ただ、貼りっぱなしはよくないから、なるべく空気に触れさせてね。そうそう、斉藤君は授業に戻ってもらったわ」
「あいつ、斉藤って言うんだ。俺もクラスの奴くらいしか名前分からないや」
篤司と先生が楽しそうに話しているのを、匠はぼんやりと見ていた。
「矢萩君はまだ具合が悪そうね。
親子丼の試食の時に斉藤君が呼びに来てくれるから、それまで寝てるといいわ。高浜君は授業に戻ってね」
「えーっ」と言いながらも、篤司は椅子から立ち上がった。
「匠、無理するなよ。じゃあな」
「うん。篤司ありがとう」
篤司が去ると、匠は目をつぶった。
すると、懐かしい人の顔が思い浮かんできて、涙が出そうになる。
匠は手の甲で目を隠した。
……斉藤 育哉(さいとう いくや)。あいつとはもう関わりたくない。
匠は唇をギリリと噛み締めながら思った。
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