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涙が溢れ、畳を濡らした。
白蓮と出会い、愛を知った。
もう何も知らなかった頃のように、旦那様との行為を耐えることは出来ない。
そして愛する人を失って、また前のような生活を送ることも出来ない。
考えて考えて、出た答えは1つだった。
「白蓮。出会った夜のことを覚えてる?」
「もちろんだ。」
「初めて1つになるときに、私言ったよね?白蓮になら喰われてもいいって。…白蓮、私を食べて…。」
嗚咽で上手く声が出ず、絞り出した声で懇願した。
白蓮も瞳に涙を浮かべ、震える手で私を抱き寄せた。
「それしか、道はないのか…?私は、もっとお前と共に生きていたかった。」
「私も、貴方との幸せな日々が永遠に続けばいいと思ってた。でも貴方が死んでしまうなら、一緒に死にたい。貴方に食べられて、貴方と1つになって、貴方と共に死にたい。」
「………。わかったよ。1つになろう。そして、共に死のう。」
白蓮から深い口づけをされる。
急速に体から力が抜けていくのを感じる。
そんな中、白蓮の目から零れ落ちた涙が私の顔に降ってきた。
泣かないで、白蓮。
私は貴方に出会えて、短い間だったけど幸せな日々を過ごせた。
貴方に出会えなければ、私はずっと死んだままだった。
貴方は夜空が私の願いを聞いて出会わせてくれた、最愛の人。
もう口に出して伝えることが出来そうにないから、沢山の『愛してる』を込めて口づけをする。
少しでも伝わるように、最後の力を振り絞って白蓮を抱きしめた。
私の意識は少しずつ薄れ、力が入らなくなった腕は畳の上に落ちた。
そして白蓮の腕の中で、心臓の動きを止めた。
白蓮は泣きながら私の亡骸を強く抱きしめ、何度も何度も髪を撫で口づけを落とした。
「うっ……。葉月……。愛してる。愛してるよ、葉月。すぐ、そばに行くから……。」
屋敷の人間達の足音が、少しずつ近づいて来るのが聞こえる。
私の亡骸を抱き上げ、ゆっくりと立ち上がる白蓮は足音がする方へ歩みを進める。
離れを出ると、少し遠くに刀を持った屋敷の男達が見えた。
「止まれ!止まるんだ、化け物っ。」
男の声を無視して、口には笑みを浮かべ、目は焦点が合わず虚ろな白蓮がゆっくり近づいていく。
男達は息を呑んだが、震える手で刀を構えた。
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