貴方と共に

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体は快楽で濡れても、心は気持ち悪くて冷えていく。 私の目から涙が溢れるのを旦那様は気持ちいいからだと思っているけど、本当はツラいから。 いつからこの行為は始まったのだろう? 体の成長が止まる少し前だっただろうか。 もう、何年も前のことだ。 いつまでこんなことを続ければいいのだろうか? 旦那様か私が死ぬまで? 私と旦那様は父娘ほど歳が離れているが、まだまだ死ぬような歳ではない。 今日も行為の最中、光輝く星空を見上げる。 満点の星に願いを叶える力があるなら、どうか私をここから出して。 それが出来ないなら、私を殺してください。 もう、何度願ったかも忘れてしまった。 翌日の夜。 1人静かに過ごせる夜。 旦那様には奥様も、私と同じくらいの歳のお子様もいる。 だから、毎夜私のところに来ることはなかった。 それが私にとって唯一の救い。 今日も夜空にむかって願った。 窓から身を乗り出し、手を夜空に伸ばした。 伸ばしたところで、誰もとってくれることのない手が虚しく宙に浮いている。 涙が頬を伝い、止まらない。 もう、いっそのこと死んでしまいたい…。 「何故泣いている。」 突然知らない声が聞こえて、乗り出していた身を引っ込めた。 そして声の主を探すと、紅葉の木の下に見知らぬ男性が立っていた。 木の陰に隠れていた声の主が、1歩、また1歩と近づいてきて月明かりのもとに出てきた。 それはそれは美しい白銀の髪が腰まで伸び、瞳は妖しく紅く光って見えた。 長身で長い手足に、透き通るような白い肌。 その姿は息を呑むほど美しく、人間ではないようだった。 「貴方は、誰?」 「面白いことを聞く。この姿を見て、恐ろしくはないのか?」 「何故?貴方はとても綺麗です。恐ろしくなんてない。」 私の言葉に男性は驚いたように目を開き、次の瞬間笑いだした。 「ハハハッ!娘よ、お前は本当に面白いな。…もう、涙は止まったか?」 男性は手を伸ばし私の頬に触れ、涙の跡をそっと拭った。 男性の手は驚くほど冷たかったけど、私には何故か心地好くて、男性の手に自分の手を重ね瞳を閉じた。 また涙が零れ落ちる。 「何故、また泣くのだ?」 「わからない。わからないけど、もう少しこのままでいてください。私今、幸せを感じてるみたいです。」
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