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「白蓮。私、あなたと1つになりたい。」
涙で潤む瞳で見上げながら、白蓮を誘う。
白蓮は私に触れようとした手を止めて、強く拳を握った。
それは何かに耐えているように見えた。
「白蓮?どうしたの?」
私は上半身を起こし、白蓮の方へ手を伸ばした。
「駄目だ!触らないでくれ!」
突然大きな声を出され、行き場を無くした手が空中を彷徨った。
「白蓮…?私、何か気に障ることした?女の私から誘うなんて、はしたなかった?」
「違うっ!そうじゃない!葉月は、俺は人の精気吸う化け物だ。お前を愛し求めれば求めるほど、お前の精気を吸ってしまう。こんな自制が利かないのは初めてだ。このままだと、葉月を殺してしまいそうで…。」
「かまわない。貴方になら殺されてもいい。貴方に喰われるということは、貴方と1つになって貴方の中で生きていけるということでしょ?それ以上嬉しいことなんてないわ。一生貴方と一緒…。」
私は白蓮の胸に手を当てた。
私と同じように、強く激しく脈打っているのを感じる。
その欲望を我慢しないでと言うように、私から唇を重ねる。
「葉月。殺したくない…。死なないでくれ…。」
「ずっとそばにいる。私も、貴方と離れたくない。白蓮、お願い…。貴方を頂戴。」
「あぁ。私も葉月と1つになりたい。」
畳の上では体を痛めると、布団の上に寝かされた。
着物を脱ぎ捨て、身体中に口づけが落とされ、ゆっくりと体が重なった。
「白、蓮っ…。はぁ、もっと、深く…。深く…。」
「葉月…。綺麗だ。」
2人の激しい吐息が響く部屋。
身体中が熱くて、心が震える。
こんな気持ちは初めてで、心から感情が溢れて涙が流れた。
これが全身で悦びを感じるということなんだろうか?
あんなに嫌いだったはずの行為。
いつもいつも早く終われと思っていた。
でも愛する人との性交が、こんなにも幸せなことだと知ることが出来て良かった。
ずっとこのままでいたい…。
翌日、目を開けると窓から夕陽が射していた。
私は驚いて勢いよく体を起こすと、目眩と頭痛に襲われ頭を押さえた。
部屋の中を見ると、白蓮の姿がなかった。
着た覚えのない着物。
綺麗に整えられた布団。
おそらくもってきたばかりの夕飯。
昨夜のことは、夢だったのだろうか?
でも体にまだ、昨夜の感触が確かに残っている。
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