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「ねぇ、白蓮。女中には、貴方の姿が見えないの?」
「女中だけではない。葉月以外の人間に、私の姿は見えない。」
「私だけ?私だけが貴方を見ることが出来る。まるで貴方を独り占めしてるみたい。」
「私を独り占め出来て喜ぶような人間は葉月くらいだ。」
「白蓮はその美しい姿で人を惑わすんでしょ?独り占め出来たら喜ぶ女性は沢山いそうだけど。」
「この姿を美しいというのも葉月くらいだ。私が人を惑わすときはもっと人間に近い姿、黒髪に黒い瞳の美丈夫で現す。この真の姿では、人は恐れ逃げていく。人は自分達と違う見た目の者を恐れるからな。」
私は白蓮の長い髪を一束掴み、指に絡めた。
「絹みたいに綺麗な髪なのに。」
「この髪が好きか?」
「髪だけじゃない。貴方のすべてが好きよ。」
後ろから、頭に口づけが落とされた。
「ありがとう。私も好きだよ。さぁ、もう寝よう。」
一緒に布団に入り、腕枕をしてもらった。
そして白蓮の胸に顔を埋め、すぐに眠りに落ちた。
翌日も、その翌日も、私達は寄り添いながら1日を過ごした。
お互いの温もりを感じ合うように。
今までは長い長い1日が、あっという間に過ぎるようになった。
楽しい時間は過ぎるのが早いと知った。
外に出ることは出来なかったけど、1日中白蓮と話しているだけで楽しかった。
白蓮が見てきた外の世界のことを聞いては質問攻めにする私を、『まるで赤子だ。』と笑いながらすべてに答えてくれた。
こんな幸せ、長く続くわけがなかった。
終わりは音もたてず、すぐに私達のもとへやって来た。
その日の前夜。
私の体が元気になったので、2度目の熱い夜を過ごした。
白蓮は私の体を心配していたけれど、私が何度も誘いそれに応えてくれた。
最初のときのように夕方まで寝ることなく、朝いつもと同じ時間に目が覚めた。
けれど、体が重くてゆっくりとしか動けなかった。
「また無理をさせてしまった。すまない。」
「私が誘ったのよ。白蓮は悪くないんだから、謝らないで。でも体を起こしてるのも大変だから、今日はこうしてて。」
私は白蓮の足の間にすっぽり納まるように座り、胸に顔を埋めた。
すると白蓮は私の頭に頬を刷り寄せ、そっと髪を撫でてくれた。
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