新一年生

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新一年生

 春から独り暮らしを始めたのだが、自宅の窓から近くにある大きな交差点がよく見えた。  私は朝、割とゆっくりしていられる仕事なので、のんびりとした身支度の際に、交差点の歩道橋を通って学校に通う子供達を眺めるようになった。  そこそこ大きな子達は落ち着いているが、新入生らしき小さな子達は朝から毎日元気で、転ぶんじゃないかと心配する勢いで歩道橋を走り回っている。  そんな光景を見ている内に、とあることに気がついた。  歩道橋の階段を上がってきた時点の子供の数と、下りていく際の数が合わないのだ。  こちらも真剣に数えている訳ではないが、最近はランドセルがカラフルなので、あんな色があるこんな色があると見ていたら、つい人数がカウントできるようになってしまった。そのせいで人数の足りなさがよく判ってしまうのだ。  通学路と時間帯の関係で、通る子はだいたいいつも変わらない。  年上の子達に混ざって、いかにも一年生といったはしゃぐ動きの子供達が、次々横断歩道を駆け抜けていく。  だいたい先頭はオレンジランドセルの女の子。すぐ後に黒色の男の子が続いて、それを水色の男の子が追いかけていく。  しばらく間が空くと、同じ、紫とピンクの中間みたいなランドセルを背負った子が二人、ゆっくりのんびり通り抜けて、スタンダードな赤と黒の二人連れがそのすぐ後に続く。そこからまた少し遅れてオレンジと水色ペア。私の見る限り、いかにも一年生ぽいのはこの九人だ。  でも、階段を上って来た時には、最初の三人と次に続く紫ピンクの二人連れの間に、一人、昔ながらの真っ赤なランドセルの女の子がいるのだが、下りる時、この子の姿は見かけないのだ。
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