カンセンシュウ

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 ここは何の変哲もないオフィスビル。  その一角で、とある現象が起こりつつあるのを、今は数名の社員だけが感じ取っていた。  開発部第五課所属の坂本は、キーボードを打つ手を止めずに、ちらり時計へと視線をやった。  壁に掛けられた時計の針は、もうすぐ正午を指そうとしている。 「なあ……」  坂本は隣にいる武市に話しかけた。 「今日の昼なんだけどさ、俺、無性に食いたくなったもんがあるんだわ」  それを聞いた武市は、くるり、とイスごと体を坂本の方へ向けた。 「やっぱり、お前も気になったか」 「やっぱりって事は、お前もか」 「ああ。アイツが出社してから気になってしようがないんだよ。俺達以外にも、絶対何人かに感染してる筈だぜ」
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