「アプリ」

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「このアプリ知ってる?」 友人の愛がスマホでリンク先を開くと真っ赤な画面に黒抜き文字で「だれかさん」というタイトルが現れた。 少々悪趣味な感じの画像に、皆が眉をひそめた。 「これ、誰が作ったかわからないし、最初はどこかの風景が写ってて、日が進む内に段々自分の所に近づいてくるんだって。12日目になると家の前まで来て13日目にチャイム鳴らされて、だれかさんが入ってくるらしいんだよね。」 「なにそれ。」 「どーせ噂でしょ。」 「で、愛はそれ何日目なの。」 「んー、6日め。でもまだ何処だかわからない風景なんだよね。」 「本当に来たら、どーするの。」 「12日めにアプリ削除したらいいだけだし。」 実のところ、愛も信じてないし話のネタにと噂のアプリを入れたらしいが、それから暫くして様子がおかしくなっていった。 「これ、駅前だよね。来てるの、だれかさんが、うちを目指して!」 「落ち着いてよ、位置情報システム使えば近くの画像送れるんだし。あっ、アプリ削除すればいいじゃん。」 「出来ないの。削除しようとすると、このアプリは存在しません、って。」 他の子が試すものの、結果は同じ。 削除どころか、存在すらしていないなど有り得るのだろうか。 画面には愛の家の近くが写し出され、三人は無言になってしまった。 「皆で愛の家に泊まらない?」「えっ、でも。」「一人にさせられないよ。」 愛の家は父親は単身赴任、母親は看護師で夜勤で家を空ける事が多かった。 「大丈夫だよ、四人ならなんとかなるって。」 13日め、私達は皆で泊まり、寝ないで部屋でじっとしていた。画面には愛の玄関、いつだれかさんがきてもおかしくない。 (ピンポーン) 「キャア!?」「えっ、何?停電?」 深夜1時、チャイムと共に部屋の明かりが消え、皆が騒ぎ出す。 その数分後、何事もなかったかのように部屋の電気は再び着いた。 「愛?」「えっ?ねえ、あと一人、名前・・・あれ?」 愛が姿を消した。それともう一人居たはずの友達も・・・なのに、その友達が誰で、何て名前なのか私ともう一人の友人も思い出せずにいた。 そもそも、いつからあの子は私達のグループにいたのか・・・。 私達は、自然と「だれかさん。」と言葉を発していた。 愛はあの日以来行方不明、スマホからアプリは消えていた。 だれかさんは愛をどこへ連れて行ってしまったのだろうか。
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