「こぶ」

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いつの頃からだろうか、気づいた時には後頭部に小さなこぶのような物があった。 指先でなぞる様に触ると小指の関節程あるのだが、特に痛みや痒みも感じない。 寝てる内に何かにぶつけたりしたのだろうか。 その時は然程気にしていなかったのだが、それから数日して、何となく頭を触って思わず跳び上がる程驚いた。 こぶが大きくなっているのだ。 髪の毛に隠れて外から見えないが、皮膚に直接触れると明らかに膨らんでいる。 まるでピンポン玉の様ではないか。 私は怖くなり、急いで洗面所へと向かった。 片手に鏡を持ち、洗面所の鏡に合わせ鏡の要領で髪を掻き分けそのこぶがどんな物なのかを確認したのだ。 鏡の向こうにあったのは、こぶなんかではなく、血走った大きな目玉だった。 その目玉と目が合ったのだ。 「うわああー!」 私は悲鳴をあげ、鏡を放り出し、部屋へ戻って布団をかぶりガタガタ震えながらその日を過ごした。 それから私は見なかった事にして、毎日を過ごした。それは怖かったからだし、認めたくもなかったからである。 なるべく触らないようにしていたのだが、ふとまた気になり軽く触れてみた。 「なくなってる?」 何度触ってもその目玉があった箇所には何もない。 「良かった。本当に良かった。」 「ヨカツタ・・・ホントニ」 えっ? 声がした。誰もいない、この部屋で、すぐ後ろから。 振り向くがやはり誰もいない。声はもっと近く、まるで頭から直接・・・。 私は嫌な予感がして洗面所へ立った。 震える手で、目玉のあった所から更に下の辺りを手で、掻き分けた。 そこには、人間の唇があり、パクパクと開いて言葉を発していた。 「ホント ニ ヨカツタ。ホント ニ ヨカツタ・・・。」
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