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学校から帰ってくると母の姿はなく、買い物に行くとメモを残してあり、弟は外に遊び行ってしまい、自分は暇なので居間でテレビを見ていた。
「ピンポーン。」
玄関のチャイムが鳴る。
親が居ない時は面倒なので居留守を使う事が多い。
「ピンポーン。」
うるさいな。いないっつーの。
「ピンポーン。」
しつこい、どうせ勧誘なんでしょ。
「ピンポーン。」
ああっ!もう、なんなの。
来客を映すモニターへと、重い腰を上げて近づくとランドセルを背負った子供が見える。
帽子を深く被り顔は見えないけれど、背格好から察するに3年生位の女の子のようだ。
「はい。何か用かな?」
「お母さんいますか?」
「いいえ、いないよ。」
きっと訪ねる家を間違えたのだろう。
モニターを切ってソファーへと向かう。
「ピンポーン。」
えっ?
今度はなに?今日は客多いな。
再びモニターを見ると、先程と同じ角度で同じ女の子が映っている。
「どーしたの?迷子なの?」
「お母さんいますか?」
「ううん、ここには居ないんだよ。間違えてるんじゃない?」
「お母さんいますか?」
「だから・・・。」
言葉を飲み込んだ。
さっきより帽子が上を向いていて顔が少し見える。
・・・・血?
よくは見えないけど、額から血が流れている様に見える。
慌てて玄関のドアに駆け寄り、鍵をはずしてドアを開けた。
「大丈夫?怪我したの?」
ドアの先は道路。
誰も居ない。
「イタズラ?」
わけがわからず鍵を閉めて部屋の中へと戻ると・・・
「ピンポーン。」
・・・・えっ?
モニターを見ると、やはりさっきの女の子がいる。
怖くなった私は、通話ボタンを押さずにモニターから離れて音を出さないようにソファーで小さく丸まった。
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン。」
やだ、怖い。
誰か、助けて。
お母さん。
そうだ、携帯に電話しよう。
スマホを手に取り、母親にかけようとすると玄関で音がした。
ガチャリ。
良かった、お母さんが帰って来た。
鍵を開ける音がして、私は待ちきれずに立ち上がった。
「お母さんいますか?」
その声は私の耳元で囁いた。
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