繋がれていくもの

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他の感染症の様に、体力や免疫力の低い者という訳では無かった。 老若男女関係無く、また健康状態にも左右されない。 どの様な経路で、どの様な時に、どの様な人間にうつるのかが全く解らないのだ。 この病気は、感染すると目が真っ赤に充血する為、感染者を見つける事は難しく無い。 目の赤さはどんどん酷くなり、最後には血が溢れだす。そして死に至る。 恐ろしいのは、死亡率の高さだ。 感染経路すら不明なこの病気に特効薬は無い。 いや、無かった。 日本に感染者が出るよりも前、感染したにも関わらず初めて死を免れた者が表れた。 小さな国の山奥に住む現代において文明とかけ離れた部族の少年だった。 医者も居ない薬も無い村に住む少年が、どうやって病気を克服したのか、世界中が持てる全ての技術を出し合い発見した、唯一の特効薬。 それは感染者の家族の心臓だった。 少年の住む村でも感染は広まり、族長の息子と孫である少年も感染した。 この恐ろしい病気に、族長は現代において禁止されていた呪術で対抗しようとしたのだ。 愛する者の心臓を口にする恐ろしい儀式だった。 族長は息子と孫を救う為、息子の妻であり少年の母である女の心臓を贄にした。 二人とも口にしたけれど助かったのは少年のみ。 父親である族長の息子は助からなかった。     
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