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「そういうことなんで――――この度、メイド業をいったん止めて。この世界でアリューゼシド様の案内役としてお勤めさせていただくことになったわけです」
「神の言ってた『使いの者』ってお前のことかいッ!」
なんなんだ、この突飛すぎる事態は……。収集がつかない。とんだ茶番である。
「おいおい、転校生。今はホームルーム中だってのに、ごちゃごちゃとうるせーぞ。まだしばかれ足りねぇのか?」
しゃべくる俺に向けてタンニンがぎろりと睨んできた。がくがくブルブル。突き刺さりそうなほど鋭くひくい声音である。
「め、めっそうもございませんことよっ!? オホホホホ……」
魔界の貴婦人さながらの声音でごまかす俺。
あぶないあぶない。そういえば、学校とは、先生の話を静かに聞かなければならないんだったな。
「アリューゼシド様、完全にキャラ崩壊してますね」
「キャラ崩壊とか言うなしッ!?」
盛大につっこみを入れると、またもやタンニンの視線が突き刺さる。俺は背筋を伸ばして、まじめに訊いているフリをつとめる。
教壇に立ってあれこれ話をするタンニンの目を盗みつつ、俺はひそひそとセツナに声をかけた。
「おい、俺はこれからどうすればいいんだ?」
「そうですね。まずは必要なものを渡しておきますね。生徒手帳に、保険証に、財布に通帳に……」
どさどさと机の上に荷物が置かれる。
いや、そういうことを訊いているのじゃないけれども……。
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